道端応援団、空へいく。

実家とは、自分の生まれ、育った家だけを指すのではなく、
その周辺も含まれる。
最寄りの駅から、実家に向かう約10分ほどの道のり。
てくてく歩いていると、必ず誰かに会う。
同級生のお母さん、ご近所のおばさん・・・。
畑仕事をされていたり、散歩中であったり、たまたま外に
出ておられたり・・・。

子どもの頃から、よく声をかけられた。
「まさこちゃん、これからピアノ?」
「まさこちゃん、今日も名古屋行くの」
と、そんな感じに。

自宅から聞こえるピアノの音は、聞きようによっては
大騒音なのに、ご近所さんが赦してくれていた。
時には練習しているところを見物に来られるおばさんも
いた。

あれから、半世紀以上経つが、そのおばちゃんたちも
それぞれ年を重ねられた。

2年ほど前に、実家の近くでばったりお会いした
おばちゃん。
私の顔を見て、くしゃくしゃの笑顔になって喜んで
くださった。そのあと、表情が変わり、父母のことを
悼んでくださった。そして、ご自身のことを語られた。
おそらく、誰かに聞いてほしかったのだろう。


小学生の頃から私を知ってもらっている人がいるだけでも
うれしく、その数分、会話を重ねた。
「元気にしていてくださいね」
握手で別れた。おばちゃんはずっと手を振って見送って
くれた。


その後、近所の施設に演奏に行った際、そこにおられて
びっくりした。少し認知症が進んでおられたようであったが、
私のことはわかったようで、また握手をした。

あれから、道で見かけることがなくなり、1年以上が経過した。
どうされているかな?元気かな・・・。

つい最近、そのお宅の玄関で息子さんらしき人を見かけた。
「あの・・・」
声をかけた。名を名乗ると、その男性は驚かれた。
私が小学校六年生、その人は一年生だった。同じ小学校へ
通っていたし、懐かしい気持になった。
「お久しぶりです。あのー、お母さんはどうされています?」
勇気をもって尋ねると、昨年に亡くなっておられたとのこと。

ああ、そうか・・・。
なんだか、とても寂しい気がした。
道で最後に会ったとき、
「早くお父さん、迎えにきてくれへんかな」
と言われていたことをふと思い出した。
そうだ、旦那さんに会いに行かれたんだ。
もしかしたら、うちの両親にも会っているかも・・・。

私を子どもの頃から応援してくださった ご近所のおばちゃんたち。
気が付けば 18歳で突然、地元から消えていた私のことを、
ずっと覚えていてくださった。

「まさこちゃん、がんばって」
「まあちゃん、どこ行くの」
この声が、実家を離れても思い出すことがあった。

ふるさとの道端応援団。
だんだん数が減ってくるのは、寂しいけれど、応援される場所が
移動しただけ。今はきっと空から見ておられるかも。

人生にはいろんな接点があり、交わり方もさまざまであるが、
自分を支えてくれた人たちが、その時々に、あちらこちらに
いてくださったことに改めて感謝したい。
その人たちの見守りと応援があってこそ、ここまで何とか
歩んでこれた。

ふるさとの道端応援団。これからも、心に刻み続けたい。


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