良薬になる、自作の音。

名古屋を拠点にしてもう8年も経過したのに、
歯医者は東京のクリニックに通っている。
歯科というのは継続して通うため、相性も
大切であり、安心して任せられる関係性も
重要である。

私が通い続けている歯科はそこが開業して
間もない頃からであるから、20年近くも
お世話になっている。だから、住む場所が
代わっても、なんとか都合をつけて、
通い続けている。
そこが自分が20年以上住んでいた町にあり、
本当にご近所さんであったため、そこに
通うことで、神楽坂に帰ってきたような
気持になれる・・という点も通い続けている
理由だ。
治療へのこだわり、信念、そして丁寧な説明。
これらも安心して通える理由。

先生には、人前で話すから、演奏会があるから
といって、歯の治療についても、いろいろ便宜を
図っていただいたこともあった。

そんなこんなもあり、自作のCDをこれまでの活動の
報告、日ごろのお礼のつもりでお渡ししたら、
とても喜んでくださり、声を褒めてくださったり、
「あれ、ピアノ弾きながら歌っているんですかあ」
と興味を示してくださったことで、余計に親密さ
も増した。
長年通ってはいるけれど、一患者ではあるけれど、
自分のことを知ってもらえることはとても光栄だ。

そんなこんなで、月に1度ほどは通院を続けているが、
最近は、予約時間に玄関ドアを開くと、
どっかで聴いた声、馴染みの曲が流れてくると
家に帰ってきたような気もちになる。
そう、自分のCDを院内で流してくださっている。
まあ、あいつが来る日だから・・ということで、
気を遣ってくださっているのかもしれないが、
自分で歌っている曲、自作のピアノ音が、
小さなボリュームで院内中に響いているのが
とても不思議でもあり、なんだかとても空間に
馴染んでおり、うれしくなる。
こういうところで聴くのもありだ、スマホで
一人で聴く・・だけでなく、公共空間で流れる
のは恥ずかしいが、なんだか誇らしくもあり
待ち時間も短く感じる。

そして、治療時間こそ、このピアノ音や歌声
が私にとって良薬となる。まるで消毒をされて
いるような感じである。
きれいになっていく感じ、そして時に耳にも
つらい治療音に注意が行かないようにして
くれる。馴染みのメロディーをBGMと一緒に
頭でなぞっていれば、機械の音は心理的に
小さく聞こえて辛さも軽減する。

音楽は良薬になる。
ときに麻酔?とくに消毒?ときに鎮痛剤?
とにかく、自作の音を流して迎えてもらえる
医院がこの世にあること自体、感謝感激である。

身体が動く限り、先生が現役で活躍される限り、
自分の東京時代との縁をつなぐこの歯科には
通い続けたい。
神楽坂駅に降り立つと、
故郷に帰ってくる気持ちになれる。
ここに通い続ける限り、ずっとその時代のことも
忘れない。
そして、本当によく勉強されているドクターに
敬意を表し、更なる活躍を祈るのみ。

今朝は、頭の中を自作のワルツが流れている。





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