不思議なものだ。
その作品が遺作だと聞けば、特別な感じがする。
それは作家が、作曲者が、最後と思ってつくったのか、
意図しなかったが遺作になってしまったのか・・はわからないが、
いずれにしても、遺作といわれると、その人の人生を、最後を想像し
胸がいっぱいになる。
何年か前から、美しいと思い、ひとたび耳にすれば、聞き入ってしまう
ピアノ曲があった。ショパンの作品だ。
なんとも切なく、悲しく・・この世のはかなさを思う・・・・そんな曲。
それがショパンの遺作ノクターンであることを最近知った。
ショパンの祖国ポーランドに、家族に寄せる思いが静かに伝わってくる。
結果、パリで亡くなることになるショパンであるが、
亡くなったら、祖国へ心臓をもちかえってほしいという遺言を残していたそうだ。
そして、実際にその望み通り、ショパンの過ごしたワル シャワ実家のすぐそばにある教会に安置されているそうだ。
ショパンは、曲ができたらいつもまず家族にきいてもらっていたそうだ。
家族がいかにかけがえのない、存在であったのか・・。その様子が目に浮かぶ。
その家族のいるワルシャワに帰りたかった、せめて心臓だけでも・・・。
このエピソードを知り、詩人はどこまでも詩人であると思った。
あなたの宝物があるところに、あなたの心がある。
と、その心臓が安置されている教会の中に、その言葉が、記されているそうだ。
家族の思い出とともに、ふるさとに眠る。遺作のノクターンは、そんな作曲家の永遠の遺志を映し出しているような一曲だ。
いつかどれかが遺作となる。どんな思いで?どんな状態で綴ることになるのだろう。
最近、抱きしめたい曲のひとつだ。練習もはじめようと思う。