ピアノの譜面台にタブレットを置いて、そこに映る楽譜を見て
演奏するピアニストは最近増えているけれど、そのタブレットが
ZOOMにより繋がれて、相手の顔を見ながら、話をしながら弾きながら
という、一風変わったリモート会議。
いやはや、コロナのおかげで、スゴイことができるようになった。
そして、その傍らにパソコンを置いて、台本を見ながら、その脇に
スマホを置いて、時々録音して・・・。ZOOMでも録画できるが、
どうもスマホの録音機能の方が音質よく録れるようだ・・・。
などなど、いろんなことを一度に試す。
全ては試行錯誤。
来月上演する演劇で使う音楽の打ち合わせ。
脚本は一応読んだ。だいたいイメージはできる。
劇のオープングとクライマックスはもちろんであるが、
その間の場面転換などで使う音を一緒に探す。
「ここは主人公はこういう心情で、周囲はこうで、このあとこうな
るので、明るいけれど、弾みすぎず・・という感じで」と作家が
リクエストを言ってくれるので、それに対して、自分の曲から
「こういう感じかな。」「こんなのはどうかな」
といろいろ弾いていく。作家はそれを聴きながら、ステージでの
場面転換の様子をあれこれと想像。役者の動き、照明の変化・・・。
それに音楽がマッチするか、効果はあるか?など タブレットに映る
作家は時に目を閉じ、下を向き、曲を聴きながら、考えている。
「あ、そこまで、元気じゃなく。」「ちょっとしっとりしすぎかな」
「じゃあ、こんな感じかな」「あ、そうかな。そういう感じかも」
同じ曲であっても、弾き方や曲調、テンポを変えることで別の曲
のようになる。普段は歌いながら演奏している曲もピアノだけでの
演奏となるとまた違う表情を持つことに気づく。
また全体だけでなく、部分を活かすこともできるという発見も。
2時間余り、脚本に沿って各場面の音をあれこれ話し合いながら、
弾きながら、聴きながら、決めていく。
これを一度録って、明日からの稽古で一度当て込んでもらい、
実際に合うかどうかを試していただき、さらに修正をして、
再度録音して・・・。
何事も対話でつくられる。
カタチあるものも、ないものも。
私は作家が表現したい世界を、どう自分の音楽で盛り上げること
ができるか。役者のセリフや演技をさらに素敵に魅せることが
できるか。それがスタッフの役割だ。
打ち合わせ後に届いた作家からのメッセージ。
「優しく、温かく、包み込まれるようなステキな曲ばかり。
歌詞があると歌詞を聞いてしまうのですが、音だけだと
また違う伝わり方をしますね。素晴らしいです。
ステキな曲をお借りして、いい作品になるようがんばります。
生演奏を聴きながらの打ち合わせ贅沢でした。」
なんだか嬉しくなる。
確かに本当に贅沢な打ち合わせ。
このような新たな課題に、また挑戦できることに感謝したい。
そして、自分の音楽性を理解いただけるクリエイティブな
仲間との出会い、気が付けば10年近くの親交に
この上なき幸せを感じる。
ともに創る。力をあわせて、素敵な作品になるように。
どんな仕事でも、活動でも同じ。
対話を重ねて、信頼を重ねて、カタチになっていく。
手探りから生まれるものは、面白い。
どんな感じ?こんな感じ?
いっぱい、対話を重ねた分だけ、いいものが
できるのだろう。
