100円の重み。

戦後から昭和40年代は、商店街が栄えた時代。
確かに小中学生の頃、地元にあった柳ケ瀬は絶頂期であった。
あれから半世紀。残念ながら衰退の一途をたどっている。
これは全国各地、いたるところで見られる寂しい現象。
食品スーパー、ショッピングモールの発展が影響。
人びとは郊外へ流れ、ドーナツ減少という言葉自体がもう
死後であるが、その穴はふさがらないまま。
観光がさかんな町の商店街はまだ元気であるが、
デパートの撤退とともに廃れていく例も多い。

最近、長崎を訪れた際に、馴染みのない商店街に立ち寄った。
前から気になっていた。長崎駅からは少し距離がある。
路面電車から見て、ああ、昔ながらの商店街だ・・どんな
雰囲気なのだろうか。今も活気があるのかな。
長崎市内には元気な商店街もあるため、期待しながら
電車をおり、アーケードの中に入る。
するとSCがある。こんな商店街の隣りに大きな店舗。
一方、商店街の人通りはまばら。
でも何軒かは店を開いて、商売をしている。
八百屋さん、果物やさん、魚屋さん、町中華・・・。
まだシャッター街ではない。

そのなかの八百屋さん。
店先に商品が並ぶ。とても安い。安すぎる。
たとえばオクラが篭盛1杯100円。
へえ?大丈夫?その値段。と思うぐらいの安さ。
思わず買いたいけれど、100円だけの買い物では申し訳ないと
思い、でも、後の野菜は重いので旅先では…と考えていると
ご近所の人らしき人たちが集まってくる。
皆さん、品定めをして、買っていく。常連さんも多いのだろう。
こんなに安くても迷っている人もいる。

わたしは、そのオクラに呼ばれた。買うしかない。
「これ、ください!これだけで悪いですけど」
100円の買い物は、本当に申し訳ない。
店主らしきおじさんが、丁寧に
「100円ですね。ありがとうございます!」と対応され、
袋にいれたオクラと交換に、
渡した100円玉をありがたく受け取られた。

この姿勢に頭が下がった。
100円のオクラ。いくらで仕入れて?お店の利益なんか・・・。
と考えると本当に申し訳ないのに、こんなに丁寧に対応
されて・・・。

隣の果物やさんでは、これまた安価な地元産のハウスすいかや
大きな梨を篭盛で販売。1篭でも十分安いが、
2つ買ったらもっと安いよ。としきりにまとめ買いをすすめて
おられた。

とにかく売りさばく、商品を回していくのが
お店の鉄則なのだろう。

「いやー、ごめんね。遠くからきているので、2個は買えない
けどいいかな。」
と言って、ミニスイカを1個を買う。200円。安すぎる。

近くに大型SCがあるのに、よくやっていけるなあ。
心配なので、また行かねばと思えてくるお店たち・・。

まちの八百屋さん。果物屋さん。魚屋さん・・。
小売店の未来は大変心配なままだ。

あのとき買ってきたオクラ。
大切に大切にいただいている。
そのたびに、あのおじさんの丁寧な接客と、
100円玉を受け取られたときに見た、荒れた手を思い出す。
元気にがんばってほしい。
それにしても、大型SCの存在は・・・。

商店街が好きだ。小さなお店の存在がうれしい。
できる限り、お店が営業を続けられるように、できる応援を
していかねば。

100円。キャッシュレスとかペイペイとか・・通用しない
現金商売のお店。

きっと今ごろ朝の仕入れに行かれているだろう。
今日もどうぞ元気に営業を!!
「へいらっしゃい!」!!

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