
旧香港上海銀行長崎支店記念館。ほんとうに何度前を通っても
中に入っても、長崎の歴史とロマンを感じる特別な空間だ。
大浦天主堂の坂下、そして海外からの客船を迎え入れる港の前に位置している
ということも、この建物が誕生した当時の国際都市長崎を想像させてくれる。
余韻の消えない翌日、この建物を管理するスタッフからメールをいただいた。
許可をいただいたので、以下に紹介させていただく。
昨日は素晴らしいコンサートを開催していただき、誠にありがとうございました。
今尾様の心のこもった演奏が本当にキラキラと美しく輝くひと時で、
私たちスタッフも忘れられない時間を過ごすことができました。
さっそく貴ブログを拝読させていただき、とてもあたたかな気持ちになりました。
11年ぶりに長崎でコンサートを開催してくださったことを本当に嬉しく思います。
重要文化財を維持していく意義や私たちの使命についてもあたらめて捉えることが
できました。今回のコンサートの中で今尾様からいただいた大きな贈り物に心より
感謝申し上げます。スタッフ全員で共有させていただきますね!
これからも多くの方々に親しんでいただける地域に開かれた館づくりをめざして
いく所存です。
今尾様が「心のふるさと」と大切に想ってくださる長崎の、ひとつの場所であれる
ように。またぜひ当館をお選びいただければ幸いです。
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これを読んで、改めてこの場所をコンサート会場に選んでよかったと思った。
ここがなければ、長崎での開催という発想にもならなかっただろう。
紹介してくださった歴史文化博物館の当時のスタッフに感謝する。
どんな立派な建物でも、時間を経れば、老朽化する。人間と同じ。
でも、こちらの記念館は121年という、人間以上の寿命を保っている。
維持するか、解体されてしまうか?
長きにわたり、必要に応じて修理をしながら、丁寧に保存して
いくには、多くの方々の意志と協力が不可欠だ。
残さねばならない!という気持ちがなければ、いずれなくなってしまう。
今回、このコンサートを行うにあたり、スタッフの皆さんのこの建物に対する
愛着を改めて感じることができた。
使用させていただくには、いろんなルールがある。ひとり一人、一組一組がそれを
守らなければ、建物の老朽化はすすむ。また避難経路なども計画された設計ではない
ため、収容人数にも制限がある。細かな取り決めを守って、使用が認められる。
他の会場とは違う緊張感をもって取り組ませていただいた。
演奏後、
「この子も喜んでいます。このピアノは弾く人によって違う音を出すんです」
と、グランドピアノを片付けながら、そんな風に語ってくれたスタッフ。
ピアノを家族のように言うのが、微笑ましかった。
「また、ぜひやってくださいね。使っていただくことでこの建物が維持できます」
そう、使わないと老朽が進む。それは、巷の空家も同じことであるが、
後世のために残しておかねばならない歴史の足跡としての文化財であれば、
なおさらのこと、うまく使い維持しながら長く保存し続ければならない。
重要文化財を守り、維持する仕事。なんと誇り高き仕事か。
細心の注意と配慮をもって。建物への敬意と愛情と、そして訪れる人々への
丁寧な対応が求められる。
長崎のホスピタリティは、わたしにとって、他の町とは一味違う深い趣がある。
今回また新たな出会いをいただいた。そして、ここで再び、そんなに間を空けずに
またやらなければ。と新たな意欲も湧いてきた。
地元の人には「ホンシャン」の愛称で呼ばれている。
また、近いうちに会いに行く。
この素敵な文化財の詳細はこちら
http://www.nmhc.jp/museum_hsb/
